ゼミ選び用・学生自主運営サイトSemiMeruに、多田へのインタビュー記事がアップされました。

2年生にして、聞き方もまとめ方も秀逸で、驚かされました。よろしければご笑覧ください。

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 生きる糧となる「知識のための知識」を得て欲しいー社会学 多田治先生 

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大学での学びと社会に出てから必要な知識、この二つの間には壁があるように感じる。大学での学びとはいったい何なのだろうか。

 今回は、早稲田大学政治経済学部政治学科、同大学大学院文学研究科を卒業後、現在は一橋大学社会学研究科に所属し、社会学部の後期ゼミを担当されている多田治先生に、「観光社会学」「多田ゼミでの学び」について伺った。

 

歴史的潮流から見るコンテンツツーリズム

 

ー本日はよろしくおねがいします。

 はい、お願いします。

 

ー観光・文化・社会・歴史と多岐にわたる、先生の専門の一つに沖縄研究がありますが、それは琉球大学にいた影響からですか。

 そうだね。赴任先が沖縄に決まって、自分が沖縄でやれることは何だろうと考えたときに、観光とか沖縄イメージがあったんだよね。

 

ー沖縄って、様々な側面がありますよね。どうして観光に着目したんでしょうか。

 サミットがあったり、朝ドラのテーマになったりと、当時沖縄は注目されていたんだ。

 けれど、基地問題や戦争、開発など沖縄についての学問的切り口が多い割に、従来の切り口が限定的だったから、社会学の立場から何ができるんだろうって考えた末、観光に行き着いたんだよね。

 ちょうど、観光が学問研究の対象にされ始めた時期だったんだ。

 

ー研究対象としての観光ですか。

 インバウンド観光が伸びていって、沖縄にとどまらず、日本の文化とか観光というコンテンツが脚光を浴びてきていたわけだよね。

 日本が固有性を発揮できる分野が、高度成長期の技術や製品といったモノから、文化やコンテンツへと舵を切る転換期だったんだよ。

 

ー沖縄は切り口であって、観光と文化、さらにはコンテンツとの関連に関心があるんですね。

 歴史にも非常に関心がある。近年のそういった潮流を成り立たせてきた、時代の流れを長いスパンで見ていくことが興味深いね。

 日本は西欧の影響を受けながらも、一貫して固有のコンテンツを継承していっている。例えば、参勤交代に見られる移動や旅行の文化という面や、浮世絵から見られる視覚的な文化という面がある。

 インバウンド観光の目玉となっている、日本の風景とか景観といったものの源流をたどると、その辺まで遡れるわけだよ。

 このように、非常に立体的にコンテンツが展開されていって、いくらでも学ぶことはあるよね。

 

ー先生はこの分野のどういった点に魅せられていますか。

 そうね。やっぱり「知識が社会を作る」ってことじゃないかな。

 知識って学問的知識っていう、論理や言葉で言い表されるものだけじゃなくて、写真とか風景などの視覚的ものも含めて知識なんだよね。

 そういった知識が我々の社会や経済を作り上げていくことが非常に興味深い。

 

ー学問的知識は知識の一側面にしか過ぎないんですね。

 そう。思想や理論も重要だけど、あくまで数多ある知識の一部でしかない。広い意味でのコンテンツが僕らの社会を作り上げている。その動きに魅せられているよね。

 それから、ドラッカー知識労働・知識生産ということを言っていて、高度に成長した社会では、人は組織に所属しながらも、各々が知識を生産し駆使して生きているから、個人の度合いが高まっている。

 

ー確かに、会社組織よりも生活者としての個人に視点がシフトしていっている気がします。

 そういった社会の中で、知識を現場に役立てるってことはますます広がってきているんだ。

 うちのゼミから行っている業界は、コンサル業界とインフラ業界が多いんだけどね。やっぱり、企業組織としての文化のあり方や、商品・組織体制の改善を考えるときに、知識が求められてくるわけ。

 

根本的な能力である「知識のための知識」を学んで欲しい

 

ーそうなると、大学で学んだことが社会ではどう活きてきますか。

 

結局、知識は性質上そのまま活かせるってことはありえないんだよ。

 それぞれの組織自体が細分化されてきて、固有のローカル性や自律性を帯びてきているから、現場に入って加工しないと知識って使えない。

 その適用可能な大本となる「知識のための知識」を大学では学んでいってほしい

 

ー「知識のための知識」とはどういうことですか。

 例えば、コンサル業界に行った卒業生の話だと、結局はクライアントの仕事場で仕事をするわけ。だから、いろんな業界を股にかけて働くわけよ。

 その場その場で知識を一から学んで、調査し答えを出していくというタフなことが求められる。そこで、一番大切なのは、大本になる考え方やベースとなる知識が、しっかり身についているかってことなんだよ。

 

ーベースとなる知識とはズバリなんですか。

 考え方や議論の仕方っていう根本的な能力。

 あと僕が思うに、一橋の社会学部には経済至上主義的な知識って求められてなくて、文化とかコンテンツに対する知見、処理能力とマネージメント能力が大切なんじゃないかな。

 

ー大学では、やはり各テーマを題材としつつ、そのような根本的な能力を培うべきということですね。

 原則となる知識を持っていれば、実際の生活・仕事の中でどう知識を使っていくかにかかってくる。

 知識をどう使っていくかに関する知識。大学ってそういうことを妥協なくとことん学べる場所だから、是非最大限に使って欲しい

 

双方向的な学びを通じて、生きる糧となる知識を得る

 

ー多田ゼミでの学びについて伺いたいです。テーマは何を学んでいるのですか。

 卒論は本当に学生次第でテーマは自由だね。ゼミでは社会学理論、歴史、観光など幅広く取り扱っている。まぁ、その年のテキストによるね。

 

ー去年はちなみに何を扱ったのですか。

 『結婚戦略』、ゼミ内でナショナリズムのことをやろうって話になって『ネイションとエスニシティー』、あとは歴史本で『鉄道への夢が日本人を作った』、『知の総合を目指して』を扱ったね。

 

ーそれらの選択の理由はなんですか。

 理論と各自の研究の参考になる要素を兼ね備えた、汎用性のある良書を選ぶようにしている。

 また、せっかくゼミで読むのだかから、一人で読むと挫折するくらい、読み応えがあるものがいいよね。

 

ー具体的にはゼミでは何をしていますか。

 そうだね、具体的に話していくと三つあるね。

 一つ目は、さっき言った文献購読だね。あとは各自の研究発表。そしてもう一つは、同人誌の制作かな。

 

ー文献を読むと同時に、同人誌も制作しているんですね。その狙いはなんでしょうか。

 与えられる教材を読むと同時に、自分たちで教材を作ってそれを共有する。

活きた日常生活の中に、テーマや対象や問題を見出すということ。それを素材にして議論をしたりすることが、学びの実感をもたらすんだよ。

 トップダウン的に上から降りてくる知識と、ボトムアップ的に知識をまとめて共有する二つの形がある。両方とも大切にしたい。

 

ーゼミを通じて身につくものはなんでしょうか。

 最終的には、生きる力になる知識を得て欲しい

 卒業してからの方が長いからね(笑)

 

ーゼミでの勉強の意義が見えてきました。本日はお忙しい中ありがとうございました。

どうもありがとう。